浜松創生ビジョン2050 戦略Ⅰ

モビリティ改革
による地方創生

はじめに

 人は通勤や通学・通院をはじめ、買い物や食事、旅行や趣味など、公共交通を利用して自由に移動することで、豊かな人生を享受することができます。ところが、浜松市は公共交通が脆弱なうえ、赤字路線バスの相次ぐ廃線と減便により、バス事業は危機的な状況にあります。車を利用できない多くの市民が外出の自由を奪われており、過度に自動車に依存した浜松の交通政策は一大転換期を迎えています。

持続可能な交通社会へ

 世界の国々はSDGs(エスディジーズ)に基づき、気候変動など地球規模で取り組むべき持続可能な開発目標に向けて動き出しました。交通の分野では、化石燃料に依存しない次世代の交通社会をめざして、100年に一度といわれるモビリティ改革が進んでいます。『成長戦略Ⅰ』は、脆弱な公共交通の充実を図り、誰もが自由に移動できる持続可能な交通社会の実現をめざしています。

現状と課題

これでいいのか浜松

  • マイナス
    6,050万人

    路線バス事業は危機的状況

     路線バス利用者はピーク時に比べ6,050万人も減り、2013年度から赤字経営が続いています。その後も赤字路線の廃線や減便が続いており、浜松市のバス交通は危機的な状況にあります。

    バス・鉄道利用客推移

    バス・鉄道利用者の推移
    (県統計年鑑、遠州鉄道資料他により作成)

  • たった
    4.4%

    公共交通分担率はわずか4.4%

     浜松市の公共交通分担率(鉄道+バス)は、第1回のパーソントリップ調査以降下がり続けています。反面、自動車の分担率は大幅に増加しています。公共交通分担率は、都市の便利さや住みやすさを示す指標でもあります。第4回以降の調査は実施されていませんが、それ以降も赤字バス路線の廃線・減便が続いており、4.0%まで下落しています。

    交通分担率の推移

    交通分担率の推移(パーソントリップ調査より)

  • ワースト
    1

    政令指定都市中ワーストワン

     公共交通分担率を政令指定都市と比較してみると、浜松市は最下位です。他市の数値は長年にわたり公共交通の整備に取り組んできた結果でもあります。平均値は20%ですから、浜松市の公共交通の整備がいかに遅れているかがよく分かります。

    政令指定都市の公共交通分担率

    政令指定都市の公共交通分担率(2007年調査)

  • 14年連続
    ワースト1

    人身交通事故件数14年連続ワーストワン

     浜松市は人口10万人当たりの人身交通事故件数が14年連続ワーストワン(2022年度)です。最も少ない新潟市の4.4倍にあたります。事故の原因は、「渋滞などでの追突」と「出合い頭」が全体の7割を占めています(市交通事故防止対策会議)。また、浜松市の高校生は6割が自転車で通学しており、高校生が関係する事故も多く起きています。

    人口10万人あたり人身事故件数
  • 300

    地域間公共交通格差が拡大

     浜松市の路線バスは、ほとんどが浜松駅を基点に放射状に伸びており、バスターミナルには1日約2,400便が発着しています。そのため都心部では毎時30便近くのバスが重複運行している区域がある一方、郊外に行くほど便数は減り、バスゼロ地域が多く、地域間公共交通格差が拡大しています。

    遠鉄バス路線図

    バスターミナルから放射状に伸びる路線バス(遠州鉄道)

  • 30

    市民の約3割が交通弱者

     運転免許証のない若年層や高齢者など、車を利用できない「交通弱者」と言われる人たちは市民の約3割を占めます。外出にはバスや電車が必要ですが、大半の市民は鉄道・バスの通らない区域に住んでおり、特に交通弱者の皆さんにとっては住みにくいまちとなっています。

  • UD

    北遠交通結節点のUD化

     「西鹿島駅」は天浜線と遠鉄線が合流する交通結節点です。天竜区民が浜松駅へ行くには、両鉄道を利用するのが最も便利ですが、両鉄道を乗り継ぐには「地下通路」を渡らなくてはならないため、大きなバリアとなっています。浜松市はユニバーサルデザイン(UD)を基本とする都市計画を進めていますので、高齢者や車いす、ベビーカーが同一ホームで水平移動できるように改善が必要です。

    遠鉄バス路線図

    西鹿島駅周辺図

    西鹿島駅周辺図

    西鹿島駅(両鉄道を繋ぐ地下通路)

  • 完成後
    40

    時代遅れとなったバスターミナル

     浜松駅バスターミナルは、旧国鉄高架化事業に伴い1982年に完成しました。1987年には浜松市営バスが累積赤字のため廃止され、遠鉄一社の運行となっています。その後40年近くが過ぎ、利用客は一度も増えることなく減り続けており、駅前の一等地を占有するバスターミナルは時代遅れとなっています。そればかりか、駅前広場の人々の自由な往来を遮断し、中心市街地活性化の妨げとなっています。

    浜松駅1955年

    1955年頃の浜松駅

    浜松駅1981年頃

    1981年頃(ターミナル建設)

    浜松駅現在

    現在の浜松駅バスターミナル

  • 路線バス車両
    削減

    コロナ禍による路線バス車両の大幅削減

     路線バスは市民の移動手段として欠くことのできない存在ですが、バス利用客激減の影響は、路線の減便や廃線に留まらず、車両の削減や車庫・営業所の廃止まで進んでいます。さらにコロナ禍の影響により、路線バス・観光バスとも大幅な車両削減を余儀なくされています。これ以上放置していると取り返しのつかない事態となりますので、交通政策として早急な対策と抜本的な改革が必要となっています。

  • 平均時速
    28㎞/h

    国1浜松バイパスの平均速度は28㎞/h

     国道1号浜松バイパス(篠原IC・小立野IC間18.3㎞)は信号機が多く、特に中田島~長鶴間は信号待ちと市街地流入出車両による渋滞で、平均速度は28㎞/hとなっています(国交省)。また渋滞時の追突など、人身交通事故件数が多発しているため中田島~長鶴間の高架化事業計画が進められています。

    国道1号浜松バイパス

    バイパスなのに信号機だらけの国道1号線浜松バイパス

浜松市の公共交通

脆弱な公共交通

 浜松市は2005年の市町村合併により、伊豆半島を超える広大な市域となりました。2年後に政令指定都市に移行しましたが、交通政策は合併以前のままで、主な公共交通は、鉄道3線(JR東海道本線、天竜浜名湖鉄道、遠鉄西鹿島線)と路線バスだけです。路線バスは市民にとって最も身近な移動手段ですが、図で示す通り、市域の大半はバスの走らない公共交通空白域のため、車を利用できない交通弱者にとっては不便な都市となっています。

静岡県全図
浜松市の主要公共交通

浜松市の主要公共交通網

運行効率の悪い路線バス

 市は公共交通基本計画において「今後もバスを主体としていく」としていますが、浜松のバス事業は危機的状況にあります。一方、鉄道3線の利用客はほぼ横這いのため、持続可能な交通社会を構築するには、バスの弱点を補い、V字回復させるためのモビリティ改革が迫られています。

バス・鉄道利用客推移

バス・鉄道利用客数の推移

バス事業のダウンサイジング

 赤字路線のバスが廃止されると、住民の移動を支援するため「浜松市自主運行バス」の運行が交通事業者に委託されます。それも最低収支率が20%を切ると廃止となり、最後は「デマンド交通」へとダウンサイジングが行われています。このままでは浜松市からバスが消えてしまうことになります。

路線バス新聞記事集

路線バスの減便・撤退の報道

根拠のない目標5.0%

 「浜松市総合交通計画2020年改訂版」は、10年後の公共交通分担率の目標を「5.0%」としています。既存の鉄道とバスを基本としていますが、1%上げるには利用客数を約1,000万人増やす必要があり、グラフが示す通り鉄道は横這い、路線バスは危機的な状況にあり不可能です。未来に責任の持てる「総合交通計画」に見直す必要があります。

市民のための行革が必要

 浜松市の公共交通は、持続可能とは逆の方向に向かっています。市町村合併以来の懸案事項は何一つ解決されず状況は悪化しています。市には都市整備部があり「都市計画課」、「交通政策課」という専門部署がありますが、問題先送りが恒常化しており、市民のための真の行革が必要となっています。

遠州鉄道西鹿島線

 遠州鉄道西鹿島線(通称:赤電)は、「新浜松駅」と「西鹿島駅」を結ぶ18駅、延長17.8kmの鉄道です。単線ながら12分間隔で運行しており、南北交通幹線として重要な役割を担っています。駅間距離は約1㎞と短く、各駅には駐輪場(C&R)が整備されており、沿線の利便性が高く、沿線集約型コンパクトシティが進んでいます。新浜松駅~上島駅間は高架化されています。

遠鉄電車

赤電車両

遠鉄線路線図

遠州鉄道西鹿島線 路線図

遠州鉄道の輸送実績

 利用客数は約30年間、安定しており、近年は1,000万人を超えていましたが、コロナ禍により2020年は大きく減少しています。駅別の乗客数では浜松駅の乗客数が多いのは、赤電沿線の都市化が進み交流人口の拡大が進んでいる証です。

遠鉄線輸送人員推移

遠鉄線輸送人員推移
(令和3年度県統計年鑑)

遠鉄線駅別利用者数

遠鉄線駅別乗客数
(令和元年度県統計年鑑)

天竜浜名湖鉄道

 天竜浜名湖鉄道(通称:天浜線)は、掛川市「掛川」と湖西市「新所原」を結ぶ単線延長67.7㎞の鉄道です。旧国鉄「二俣線」を前身としており、静岡県と沿線自治体などが出資して設立された第三セクターの鉄道会社です。浜松市内を走る距離が最も長く(尾奈~天竜二俣)、市の公共交通として重要な役割を担っています。

天浜線車両

天浜線車両

天浜線路線図

天竜浜名湖鉄道路線図

輸送人員の推移

 天浜線沿線は人口密度が低く、工場や事業所も少ないため、ここ10年程は年間150万人程度で推移しており、2020年はコロナ禍により大きく減少しています。ピーク時に比べると1/3程度減少しており、赤字補填のため静岡県が財政支援を行っています。

天浜線輸送人員推移

天浜線輸送人員推移
(静岡県統計年鑑より作成)

駅別乗車人数

 駅によって乗車人数に極端なバラつきがありますが、ローカル線ながら、首都圏と関西圏とはレールで繋がっており、沿線には都会にはない豊かな自然があります。新型コロナウィルス後のテレワーク時代を見据え、観光路線としての交流人口の拡大や、移住の誘導など沿線地域の活性化が期待されます。

天浜線駅別乗車人数

天浜線駅別乗車人数/年 (出典:令和元年度静岡県統計年鑑より作成)

天竜区の交通事情

 天竜区の人口は市の3.5%に過ぎませんが、面積は約6割を占めています。公共交通は路線バスの「秋葉線」と「浜松市自主運行バス」など数えるしかなく、便数も限られ、自動車が重要な役割を果たしています。また、天竜区は高齢化率が高く、自動車を使えない世帯が多いため、市の中心街方面に南下するには、秋葉線バスを利用するか、天浜線から遠鉄線に乗り継いでいくのが唯一の移動手段となっています。

浜松市区割り図

浜松市区割り図

浜松市の人口分布(2023.10.01)

路線バス

 浜松駅バスターミナルは、旧国鉄の高架化事業に伴う北口広場の大改造により1982年に完成しました。16角形が特徴ですが、自動車優先時代の計画のため、地下通路を使わないとバスに乗降できない構造となっています。1987年に市営バスが撤退して以来、事業者は遠鉄1社となりましたが、利用客は一度も増えることなく、ピーク時に比べ約5,700万人も減少しています。

遠鉄バス

遠鉄バス車両

放射状のバス路線

天浜線路線図

遠鉄バス主要路線図(2020年10月現在)

不便なV字型交通

 浜松市の路線バスは、浜松駅バスターミナルを基点に郊外に放射状に伸びているのが大きな特色です。環状線がないため、郊外から郊外へ移動する場合は一旦浜松駅まで行き、別のバスに乗り換えなくてはなりません。V字型移動は運賃と時間ロスが大きいため、マイカーに頼ることとなり、バス離れの大きな要因となっています。

V字型移動のバス路線

V字型移動のバス路線

浜松市自主運行バス

 浜松市は、利用客の減少により路線バスが廃止となった地域の代替バスとして、民間事業者に委託する方式で自主運行バス(地域バス)を運行しています。公共交通空白域住民の足を確保するため、行政・交通事業者・地域が連携して地域の実情にあった運行をしています。令和2年4月1日現在、下記の地域バスが運行されています。(中部運輸局自動車交通部旅客第1課資料)

浜松市自主運行バス

SDGs/MaaS社会への対応

SDGsへの対応

 SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連加盟193ヵ国が「持続可能な開発目標」として、2016年から2030年の15年間で達成すべき目標として17のゴールを掲げています。エネルギーやまちづくり、気候変動など、地球規模で取り組むべき持続可能な開発目標が定められています。『戦略Ⅰ』では、以下の2部門を目標にしています。

11住み続けられるまちづくり

13気候変動に具体的な対策を

SDGs17のゴール

SDGs17のゴール

めざすは持続可能な交通社会

 2020年10月、菅総理は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、日本はCO2排出ゼロをめざした脱炭素社会実現に向けて動き出しました。運輸部門ではマイカーが最もCO2排出量が多く、浜松はマイカーに最も依存した都市となっているため、持続可能な交通社会への改革が迫られています。

運輸部門別CO2排出量

運輸部門におけるCO2排出量
(一人を1km運ぶのに排出する二酸化炭素)

MaaSへの対応

 MaaS(マース:Mobility as a Service)は、地域住民や旅行者の移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて、スマホアプリで目的地の検索から予約、決済までを一括して行うサービスです。マイカーと同等か、それ以上に快適な移動サービスを提供する新しい概念です。

MaaSのイメージ図

MaaSのイメージ図(国土交通省)

MaaS発祥の地はヘルシンキ

 MaaSはフィンランドの首都ヘルシンキ市で生まれました。同市はマイカー依存による慢性的な渋滞や駐車場不足、それに伴うストレスや環境問題、まちの魅力低下等の問題を抱えていました。そこで、マイカーがなくても移動に困らない社会の実現をめざし、「2050年将来交通ビジョン」を策定、化石燃料に依存しない交通社会の実現に取り組んでいます。

ヘルシンキのMaaS

 ヘルシンキ市は、すべての公共交通機関(鉄道、トラム、バス)と、カーシェアリング、レンタカー、タクシーを一つのサービスとして統合し、スマホアプリ「ウィム」で、ルート検索、予約、決済のできるシステムを2016年から導入しています。以下の3つの運賃体系で運営を行っています。

ヘルシンキのMaaS

MaaS導入のための対応

 MaaSはマイカーがなくても移動に困らない社会の構築をめざすものです。基本となるのは公共交通です。浜松市の公共交通分担率は僅か4.4%ですので、新たな基幹公共交通としてLRTを導入し、公共交通網を再構築したうえで、MaaSを導入することをめざしています。

戦略目標

  1. 目標

    山積する懸案事項を解決

     「現状と課題」で取り上げた交通問題は、その多くが路線バスに起因しています。そこで「浜松型次世代交通システム」の要として、新たな交通モード(LRT:超低床次世代路面電車)を導入し、路線バスの弱点を補い再生させることで、山積する懸案事項の根本的な解決をめざしています。

    • 路線バスは利用者激減により崩壊寸前
    • 公共交通分担率は政令指定都市中最下位(4.4%)
    • 人身交通事故件数は11年連続ワーストワン
    • 地域間の交通格差が拡大
    • 市民の約3割が交通弱者
    • 郊外への無秩序な都市拡散と中心市街地の衰退
    • 時代遅れとなった浜松駅バスターミナル
    • 幹線道路の渋滞問題(国1バイパス/都田テクノロード)
  2. 目標

    持続可能な交通社会の実現

     懸案事項を解決するだけでは、過去の問題を清算したに過ぎません。「浜松型次世代交通システム」により、2050年までにマイカーがなくても移動に困らない交通社会の実現をめざします。

    ・LRT路線整備目標
    7路線延べ45.2km
    ・LRT目標輸送人員
    4,700万人(全線完成時)
    ・公共交通目標輸送人員
    1億1,800万人
    ・公共交通分担率目標
    8.8%以上

    ・運輸連合によるMaaS社会の実現

  3. 目標

    長期的に安定した税源確保

     新たな交通モードとして、定時性・利便性・輸送力の優れた「LRT」を基幹交通として導入することにより、沿線集約型のコンパクトな都市づくりを推進し、沿線周辺の都市化を誘導します。それにより市税(固定資産税・市民税等)の増収を図り、長期的に安定した財源確保をめざしています。

浜松型次世代交通システムの概要

複合型交通ネットワーク

 「広大な市域」と、「脆弱な公共交通」、「SDGs」という課題を克服するには、マイカーと自転車は無くてはならない存在です。「浜松型次世代交通システム」は、マイカーと自転車の長所と、公共交通(鉄道・LRT・バス)の長所をミックスした複合型交通ネットワークにより、山積する懸案事項を克服するとともに、マイカーから公共交通へのシフトを促し、持続可能な交通社会の実現をめざしています。

複合型交通ネットワーク

新たな交通モードの導入

公共交通への投資

 危機的な路線バス事業を再生させ、公共交通全体の利便性と運行効率を高めるには、公共交通の整備の遅れを取り戻すための投資が必要です。そこで、バスの弱点を補い、持続可能な交通社会を構築するための新たな交通モードとして「LRT」を基幹公共交通として導入し、2040年までに6路線と市内循環線延べ45.2kmの実現をめざしています。

LRT(エルアールティ)は浜松創生の切り札

 LRT(Light Rail Transit)は、日本では「超低床次世代路面電車」と言われています。輸送力・定時性・快適性が高く、CO2を出さないことから、世界がめざしている持続可能な開発目標(SDGs)を達成するうえで、浜松に最も適した次世代交通システムで、浜松創生の切り札となります。

重点施策

  1. 7路線のLRTを整備

    公共交通への投資

     政令指定都市浜松の基幹交通として、7路線延べ45.2kmのLRTを整備し、モータリゼーショにより郊外に拡散した都市を、効率の良いコンパクトな都市に集約して、持続可能な都市づくりをめざしています。最も需要ニーズの高い「三方原本線」から順次整備していく構想です。

    1. 三方原本線 16.7㎞
    2. 中田島線 4.8km
    3. 富塚線 3.0km
    4. 入野雄踏線 10.8km
    5. 宮竹線 6.1km
    6. 浜北線 3.2km
    7. 市内循環線 0.6km(1周約3.2km)
    鉄道・LRT・バス路線構想図

    鉄道・LRT・路線バス構想図

    P&R(パーク・アンド・ライド)の整備

     LRTの主要停留場にはP&Rを整備(駐車場・駐輪場)し、自宅から最寄りのP&Rまではマイカー又は自転車を利用し、LRTへ乗り継ぐようにして公共交通の利用を促進します。LRTの運賃は政策的に一律200円に抑え、P&Rも1日100円として、マイカー依存からの脱却をめざしています。

  2. 浜松駅北口広場の再整備

    駅前一等地の高度利用

     浜松駅は西遠広域都市圏における交通の要衝です。バスターミナルは完成後40年余が過ぎ利用客は激減し、その役割は終えつつあります。また駅前一等地を占有し、人の自由な往来を阻害しているため中心市街地衰退の要因となっています。100年に一度のモビリティ改革を機に、バスターミナルは廃止し、浜松駅北口地区の再整備が必要となっています。

    浜松駅全景

    浜松駅北口全景

    新ターミナル構想

     LRT導入により、バスターミナル発着のバスは大幅に削減されます。下図は現状のバスターミナルに、暫定的に「LRT」と「バス」の停留場、タクシー乗降場等を描いたものです。浜松駅北口地区の整備は、市の50年・100年先を見据えた大事業となるため、プロポーザル方式により「新ターミナル」と「浜松駅北口地区の整備」を一体化した複合高層ビル等の再開発が必要となっています。

    浜松駅北口新ターミナル構想案

    浜松駅北口新ターミナル構想案

  3. 西鹿島駅の乗り継ぎ改善

    駅舎・ホームのUD化

     遠鉄西鹿島駅は「天浜線」と「遠鉄線」が合流する重要な交通結節点です。車を利用できない人は、浜松駅方面に行くには鉄道が唯一の移動手段ですが、両鉄道のホームは地下道で結ばれており、大きなバリアとなっています。遠鉄線は西鹿島駅が終着駅となっていますので、ホームの終端と天浜線ホームを接続することで、地下道を使わないで水平移動が可能となります。下図のように駅舎と検査整備工場を移設し、車いすやベビーカーが同一ホームでスムースに乗り換えができるように、UD(ユニバーサルデザイン)化を図る必要があります。

    西鹿島駅周辺図

    西鹿島駅周辺図

    西鹿島駅全景

    西鹿島駅

    西鹿島駅(現在)
    西鹿島駅(改善案)

    鉄道敷地内での移設によるUD化

    遠鉄線ホーム地下道入口

    遠鉄線ホーム地下道入口

    天浜線ホーム地下道入口

    天浜線ホーム地下道入口

    西鹿島駅検査整備工場

    遠方は検査整備工場

  4. JR弁天島駅の橋上駅化

    市内で唯一の未整備駅

     JR弁天島駅は、浜名湖観光圏の表玄関ですが、浜松市内のJR駅の中で唯一、橋上駅化がされていません。同駅は弁天島海浜公園(海水浴や潮干狩り、花火大会)や、渚園や浜名湖ガーデンパークで開催される屋外ライブには、大量の観客が利用するため橋上駅化が必要です。

    JR弁天島駅

    JR弁天島駅(手前は国道)

     国道を横断すると弁天島海浜公園があり、新たな観光エリアとして開発計画が進められています。橋上駅化に伴い、国道を横断する自由通路の設置が望まれます。脱炭素社会を見据え、鉄道と直結させることで、鉄道利用の交流人口を増やし、地域経済の活性化を図る必要があります。

    弁天島海浜公園

    弁天島海浜公園からの眺望

    JR弁天島駅周辺図

    JR弁天島駅周辺図

  5. 運輸連合によるMaaS社会の実現

     LRT全路線が整備され、「浜松型次世代交通システム」が実現すると、浜松市内の移動性はかなり改善されます。しかし、人々の行動範囲は広く、近隣の市町をまたいで移動しているため、それに対応した都市づくりが必要となります。その最も現実的な都市圏が「西遠都市圏」です。

    運輸連合への発展

     西遠都市圏(浜松・湖西・磐田・袋井市と森町)は、人口約110万人の都市圏です。特筆すべきは人々の移動の97%が都市圏内に留まっている点です(2007年パーソントリップ調査)。そこで、都市圏内の鉄道(JR線・遠鉄線・天浜線)と路線バス・LRTの運行を統合して「運輸連合」を構成し、1枚のカード、一つの時刻表、一つの運賃制度による地域公共交通システムの実現をめざしています。

    西遠都市圏の移動実態

    西遠都市圏の人々の移動の実態

    西遠都市圏の公共交通

    西遠都市圏の公共交通(JR線・遠鉄線・天浜線)

    【運輸連合】

     運輸連合は世界では常識となっており、モビリティ改革を機に西遠都市圏に導入すべきと考えています。運輸連合の特色は、運賃を低く抑えるため、政策的に税金を投入する点にあります。これは道路や上下水道と同様の扱いに近づけるもので、採算性による公共交通の破綻を防ぐことが目的です。

    MaaS(マース)への発展

     西遠都市圏による運輸連合が実現し、基本となる公共交通ネットワークが構築されると、MaaSの導入が可能となります。そこで鉄道やバス、LRT、タクシー、デマンドバス、レンタカーやレンタサイクルなどを含めた移動手段を、MaaSアプリによってルート検索・予約・支払いのできるシステムの実現をめざしています。これにより、車を利用できなくても容易に、しかも経済的に移動できる都市圏が生まれ、持続可能な交通社会が実現することになります。

    西遠都市圏運輸連合イメージ図

    西遠都市圏運輸連合構想イメージ図

    公的補助による運賃引き下げ

     地方都市ではラッシュ時以外の乗客を増やすことが最大の課題となっています。電車もバスも乗客の有無にかかわらずダイヤ通りに運行しています。採算性を度外視して、より多くの人々に利用してもらえば、乗客は行く先々で買物や食事など消費をしますから、確実に地域経済や観光産業にとってプラスとなります。周り廻って税収となって還元されることになります。そこで、運輸連合に対して政策的に公的補助を行い、車を利用するよりも経済的と思える格安な運賃に設定することで、個々の交通事業者ではできなかったことが可能となります。

    地方創生のモデル事業に

     道路や公園などの公共施設は、すべて税金でまかなわれています。人の移動を支える公共交通はそれ以上に公共性が高く、それゆえに「公共交通」と呼ばれています。そこで、地方創生のモデル事業として、「運輸連合」に対する公的補助を実現し、モビリティ改革による地方創生をめざしています。

導入効果・経済効果

浜松型次世代交通システム導入効果

  • 実質的整備費は約900億円

     LRTの全線整備費は約1,800億円と想定しています。国の支援(1/2)を受けると市の負担は約900億円となります。この負担は、これまで公共交通への投資が行われてこなかったことによるもので、その遅れを取り戻すに過ぎません。30年で償還するとすれば、年30億円程度の負担となりますが、それ以上の経済効果が得られることになります。

  • 投資効果は絶大

    1. 懸案事項の解決

       「LRT」の導入により、長年にわたって先送りされてきた懸案事項が改善、解決され、持続可能な交通社会を次代に繋いでいくことができます。逆に、何もしなければ得られるものはなく、次代に負の遺産を繋いでいくことになります。これこそが最大の投資効果と言えます。

    2. 市税の増収

       LRT全線が完成すると、延べ45.2kmにわたり沿線周辺の都市化が誘導され、沿線集約型コンパクトシティの基盤ができます。都市化が進むごとに、固定資産税をはじめ都市計画税や市民税等の市税収入が増収を続けることになり、長期的かつ安定的な財源となります。

    3. 公共交通の売り上げ拡大

       LRT全線完成時の利用客数は、4,700万人を目標としており、年間90億円(運賃一律200円)の運賃収入となります。公共交通全体では、1億1,800万人が目標ですので、多くの市民が外出することで、市全体では買物や飲食・娯楽などで、大きな消費効果が得られることになります。

    4. P&R、C&Rによる経済効果

       LRTの主要停留場にP&R・C&R(駐車場・駐輪場)を整備し、主要バス停にC&Rを整備することで、公共交通の利用が促進されます。また駐車料金や駐車場探しの心配がなくなり、買物や飲酒を楽しむことができ、地域経済を活性化させることになります。

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